カサ・バトリョバルセロナ · 非公式ガイド
バルセロナ · グラシア通り43番地

カサ・バトリョ

バルセロナのグラシア通りに建つガウディの傑作カサ・バトリョ。1877年の平凡な集合住宅が、1904年から1906年の改築で「骨の家」「竜の家」と呼ばれる建築に生まれ変わりました。歴史、外観と内部、ガウディの技法、カサ・ミラとの違い、見学の計画までを、順番に読めるようにまとめています。

チケットを見る チケットの選び方 公式のオンライン料金は29ユーロから。日付により変わります
改築は1904〜1906年世界遺産(2005年に拡張)見学は約1時間15分
バルセロナのグラシア通りに建つカサ・バトリョの外観

カサ・バトリョとは

カサ・バトリョは、バルセロナの目抜き通りグラシア通りの43番地に建つ集合住宅です。建築家アントニ・ガウディが、繊維業で財を成したジュゼップ・バトリョ・イ・カザノバスの依頼で、既存の建物を大きく改築しました。バルセロナのエイシャンプレ地区にあり、地下鉄のパサッジ・デ・グラシア駅からすぐです。

外観は、割れたタイルのモザイクで覆われた波打つ壁、仮面のようなバルコニー、骨を思わせる細い柱が特徴です。屋根はうろこのように輝く竜の背に見立てられ、地元では「骨の家(カサ・デルス・オッス)」とも呼ばれます。ガウディの作品群のひとつとして世界遺産に登録されており、1984年に始まった登録に、2005年の拡張で加わりました。

名前の読みは、スペイン語(カスティーリャ語)ではカサ・バトリョ、カタルーニャ語ではカザ・バッリョーに近い発音になります。日本語の表記ではカサ・バトリョのほか、カサ・バッリョ、バトリョ邸などが使われます。

カサ・バトリョの正面ファサード
タイルの破片(トレンカディス)で覆われた外壁。仮面のようなバルコニーが並びます。

カサ・バトリョの公式サイトは日本語で見られる?

公式サイトの casabatllo.es には日本語ページがあり、日本語で読めます。一般見学のオーディオガイドにも日本語が含まれると案内されています。

ひと目でわかる基本情報

項目内容
場所バルセロナ、エイシャンプレ地区、グラシア通り43番地
設計アントニ・ガウディ(1904〜1906年の改築)
もとの建物1877年築の集合住宅
施主ジュゼップ・バトリョ・イ・カザノバス(繊維業)
世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」(1984年登録、2005年に拡張)
チケットオンラインで29ユーロから。種類と日付で変動します
所要時間標準の見学で約1時間15分
休館日公式の案内では年中無休
最寄り駅メトロ パサッジ・デ・グラシア駅(L3・L4)

情報は2026年10月に公式サイトで確認した内容です。開館時間や料金はプログラムと日付で異なるため、購入前に公式サイトのカレンダーで確認してください。

改築の前:1877年の建物と「不和の街区」

いまカサ・バトリョが建つ場所には、1877年に最初の建物ができました。施主はリュイス・サラ・サンチェス、設計はエミリ・サラ・コルテスで、コルテスは建築学校でガウディを教えた教授のひとりでもあります。地下と1階、その上に4つの階、裏手に庭がある、19世紀後半らしい折衷様式の建物で、これといった特徴はありませんでした。

20世紀の初め、グラシア通りはバルセロナの富裕なブルジョワが邸宅の豪華さを競う通りでした。1898年には菓子商のアントニ・アマトリェールが、建築家プッチ・イ・カダファルクにグラシア通り41番地を改築させ、フランドル風の階段状の切妻と華やかなネオゴシックの装飾をまとわせます。1902年にはフランセスカ・モレラが、建築家ドメネク・イ・ムンタネーに依頼して、少し先の建物をカタルーニャ風アール・ヌーヴォーに改築させました。

そこで、アマトリェール邸の隣家を持っていたジュゼップ・バトリョが、1904年にガウディを選びます。結果として、様式のまったく違う建築が並ぶこの一角は「不和の街区(イリャ・デ・ラ・ディスコルディア)」と呼ばれるようになりました。いまも外から無料で見比べられます。

バトリョ家とガウディの出会い

ジュゼップ・バトリョ・イ・カザノバスはバルセロナで複数の繊維工場を持つ実業家で、妻のアマリア・ゴドー・ベラウンサランは、新聞「ラ・バンガルディア」を創刊した一族の出身です。夫妻は建物を1903年に購入しました。建物自体は買い手がつきにくいものでしたが、グラシア通りの真ん中という立地が決め手でした。

バトリョは、同じ一族の他の邸宅とは似ていない、人目を引く大胆な家を望みました。そこで、グエル公園を手がけたガウディに白羽の矢を立て、夫妻はガウディに制限を設けなかったと伝えられています。

1904〜1906年の改築

バトリョが最初に考えたのは、建物を取り壊して新築することでした。しかしガウディは、改築で十分だと説得し、同じ1904年のうちに建築許可の申請も出したとされます。建物は1906年に仕上がりました。

ガウディはバトリョ家の住まいとなる主階を全面的に作り変え、建物の中央の吹き抜けを広げて全体に光が届くようにし、新しい階を加えました。正面の外壁や玄関広間、階段、屋根裏と屋上も新しくなっています。ガウディの助手のドメネク・スグラニェス、ジュゼップ・カナレタ、ジョアン・ルビオも改築に加わり、外壁の陶片の装飾は協力者のジュジョールが担当しました。

増築された階の数は、日本語版Wikipediaと英語版で書き方が異なります。このサイトでは階数の断定を避けています。

1906年には、バルセロナ市が、その年の最優秀建築賞の候補にカサ・バトリョを選びました。ただし賞は別の建築家に贈られました。当時の人々にとっても、この家は評価が分かれる存在だったことがうかがえます。

曲線のスケッチと陶片が置かれた設計の作業机(イメージ画像)
ガウディは直線を避け、自然の形を手本にしました。イメージ画像です。

3つの見方で読む建築

同じ建物が、見る人によって違う物語に見えるのが特徴です。決まった正解はありません。

竜退治の伝説

屋根は竜の背中、塔の十字は聖ジョルディ(聖ゲオルギウス)の槍に見立てられています。

カーニバル

仮面のようなバルコニーと、色とりどりの陶片が、紙吹雪の舞う祭りを思わせます。

海の中

青いタイルの光の中庭や、うねる曲線の内装が、海の洞窟のような印象を与えます。

一つ目は、カタルーニャの守護聖人サン・ジョルディによる竜退治の伝説に重ねる見方です。丸く盛り上がった屋根が竜の背中、左寄りの塔が竜に突き立てられた槍で、骨のような柱は竜の犠牲になった人々の骨だと読む人もいます。

二つ目は謝肉祭(カーニバル)の見方です。屋根を道化師アルルカンの帽子、バルコニーを仮面、色とりどりの陶片のモザイクを祭りの紙吹雪に見立てます。三つ目は、自然光の取り入れ方とタイルの濃淡から、海底の洞窟を連想する見方です。

ファサード:骨、仮面、水面

ファサードは大きく三つの部分でできています。下は、モンジュイックの石を使い、うねるような線を描く部分で、1階の主階とふたつの2階のギャラリーを含みます。中央は、色とりどりのモザイクと突き出したバルコニーの部分。上は、屋根と一体になった王冠のような部分で、かつて水槽があった部屋を隠しています。

外壁のモザイクは、金色がかったオレンジから緑がかった青へと変わっていきます。割れたタイルや余ったガラスを再利用した「トレンカディス」で、工事現場から集めた端材も使われたと、英語版Wikipediaは紹介しています。改築という建て方そのものとあわせて、環境にやさしい考え方を先取りしていたという評価もあります。

割れた釉薬タイルのモザイクの近景(イメージ画像)
青や緑、金色のタイルの破片を貼るトレンカディスの雰囲気。イメージ画像です。

下階の柱は骨に、窓まわりは大きく開いた口に見えることから、「骨の家」のほか「あくびの家」とも呼ばれます。詳しい読み方は見どころと建築で順番に説明しています。

内部:主階、光の中庭、屋根裏、屋上

主階(ノーブルフロア)は、バトリョ家が暮らした階です。専用の玄関広間には、亀の甲羅を思わせる天窓があり、曲線の壁が続きます。通り側には主人の書斎と食堂、そして恋人たちのための小さな隅があり、キノコの形をした暖炉が目を引きます。

光の中庭は、建物の中央を貫く吹き抜けです。壁は青のさまざまな濃さのタイルで覆われ、上の階は濃く、下の階は淡くなっています。こうすることで、下から見上げても、各階に光がほぼ均等に届くように工夫されています。木の雨戸のついた窓で、換気もできます。ガウディはここを、海の底のような空間にしようとしたとされます。

屋根裏は、もとは住人の洗濯室や物置があった作業場です。壁は地中海の建物のように白く、60本のカテナリーアーチが連なって、動物のあばら骨の中にいるような空間をつくります。屋上は竜の背に見立てられ、トレンカディスで飾られた4つの煙突が並びます。煙突は、煙の逆流を防ぐ形に作られています。

カサ・バトリョの屋上テラスの煙突
竜の背と呼ばれる屋上。煙突の頭までタイルで装飾されています。

ガウディの技法を読む

20世紀の持ち主と修復

バトリョ家はその後も住み続けましたが、ジュゼップは1934年に亡くなり、妻が1940年まで家を守りました。その後は子どもたちが1954年まで管理し、同年に保険会社セグロス・イベリアが建物を取得して、事務所として使いました。

年できごと
1903年ジュゼップ・バトリョが建物を購入
1904〜1906年ガウディによる改築
1954年バトリョ家の所有が終わり、保険会社が取得
1970年最初の改装(内部のいくつかの部屋)
1983年外のバルコニーを元の色に復元
1984年ファサードのライトアップ(メルセ祭の式典で)
1993年チュッパチャプスで知られるベルナト家が購入
2002年ガウディ年に、主階が一般公開
2004年着工100周年に5階を修復し、屋根裏と吹き抜けも公開
2005年世界遺産に追加

一般公開の時期は資料によって異なります。上の年は英語版Wikipediaに従ったもので、公開の開始を1995年とする旅行ブログもあります。1999年には、元の外観を保ったままエレベーターが現代の基準に合わせて改修され、1995年からは、館内の2,500平方メートルを超える部屋がイベント会場として貸し出されてきたと、英語版Wikipediaは伝えています。

世界遺産としてのカサ・バトリョ

「アントニ・ガウディの作品群」は、バルセロナ県内にある7つの建築からなる世界遺産です。グエル公園、グエル邸、カサ・ミラ、カサ・ビセンス、サグラダ・ファミリアの生誕のファサードと地下礼拝堂、カサ・バトリョ、コロニア・グエル教会の地下礼拝堂が含まれます。

最初の登録は1984年で、このときの対象はグエル公園、グエル邸、カサ・ミラでした。カサ・バトリョは2005年の拡張で加わっています。登録基準は(i)人類の創造的才能を表す傑作、(ii)建築や芸術の発展における価値の交流、(iv)ある時代を示す建築の優れた例の3つです。

カサ・バトリョを「1984年に世界遺産になった」と書いているページがありますが、正しくは1984年登録の遺産に2005年に追加されたものです。

いまのカサ・バトリョ:隈研吾の階段とデジタル展示

近年のカサ・バトリョは、歴史建築の見学に加えて、没入型の展示でも知られています。公式サイトによると、「ガウディ・キューブ」は壁・天井・床に映像が映る6面のLED空間で、アーティストのレフィーク・アナドルの作品が上映されます。ほかに、映像と音で自然からの着想を体験する「ガウディ・ドーム」があります。

日本の読者にとって注目なのは、建築家の隈研吾による出口の階段とアトリウムの演出が、新しい見どころとして紹介されていることです。内容は変わることがあるため、見学前に公式サイトで確認してください。ガウディ・ドームやAR(拡張現実)のタブレットが、どのチケットに含まれるかは、旅行ブログと公式の説明が食い違っています。購入ページの表示を優先してください。

カサ・ミラとの違い

どちらにも入るべきか、片方だけなら何を選ぶかは、よくある疑問です。いちばん大きな違いは成り立ちです。カサ・バトリョは既存の建物の改築、カサ・ミラは古い建物を取り壊して建てた新築で、ガウディが手がけた最後の民間住宅でもあります。

カサ・バトリョカサ・ミラ
成り立ち1904〜1906年の改築1906年に着工した新築
通称骨の家ラ・ペドレラ(石切り場)
外観色とりどりのモザイク石を削ったような波
世界遺産2005年に追加1984年に登録

どちらも同じグラシア通りにあり、歩いて行き来できます。くわしい比較は見どころと建築にあります。

見学の計画:回り方の流れ

  1. チケットを予約する:日付と時間を決め、オンラインで購入します。
  2. 入口へ行く:予約した時間の前後15分以内に、グラシア通りの入口で受付します。
  3. 順路に沿って進む:主階、光の中庭、屋根裏、屋上の順に、オーディオガイドで進みます。
  4. 出口へ:展示空間を通って、ショップのある出口へ向かいます。

チケットは、日程の柔軟さや優先入場、内容の違いで、ブルー、シルバー、ゴールド、プラチナの4段階があります。ほかに、早朝の「いち早く体験」、夜のナイトツアー、コンサート付きのマジカルナイトなどがあります。種類ごとの違いはチケット予約の比較表にまとめました。見学の細かい注意は見学情報を参照してください。

予約前に知っておきたい注意点

サグラダ・ファミリアやカサ・ミラとの回り方

カサ・バトリョとカサ・ミラは同じグラシア通り沿いにあり、ガウディ建築を1日で続けて見る旅行者が多い組み合わせです。サグラダ・ファミリアはメトロで移動できます。日本語の予約ガイドは姉妹サイトのサグラダ・ファミリアにまとめています。

グラシア通りの街並みとカサ・バトリョ
グラシア通りは、高級ブランドとモデルニスモ建築が並ぶ通りです。

よくある質問

カサ・バトリョはどこにありますか?

バルセロナのグラシア通り43番地です。最寄りはメトロL3・L4のパサッジ・デ・グラシア駅で、徒歩ですぐです。

カサ・バトリョを設計したのはだれですか?

アントニ・ガウディです。1877年築の建物を、1904年から1906年にかけて改築しました。施主は繊維業のジュゼップ・バトリョです。

なぜ「骨の家」と呼ばれるのですか?

ファサードの石の柱が骨のように見え、バルコニーが仮面や頭蓋骨のように見えるためです。「あくびの家」と呼ばれることもあります。

世界遺産ですか?

はい。「アントニ・ガウディの作品群」の一部で、1984年に始まった登録に、2005年の拡張で加わりました。

予約は必要ですか?

オンライン予約が推奨されています。窓口の当日券は、一般の見学に限り買えますが、オンラインより4〜15ユーロ高いと公式FAQにあります。

料金はいくらですか?

公式のオンライン料金は29ユーロからです。日付や種類で変わるため、購入ページで確認してください。

所要時間はどのくらいですか?

標準の見学で約1時間15分です。朝食付きやコンサート付きは約2時間、展示とのセットは約1時間45分です。

日本語で見学できますか?

公式のオーディオガイドには日本語があります。旅行会社を通じた予約では、言語が異なる場合があるため、購入前に確認してください。

夜の見学もできますか?

ナイトツアー(25ユーロから、屋上は含まれない)と、コンサート付きのマジカルナイト(59ユーロから)があります。内容は購入ページで確認してください。